少年時代に虫捕りに熱中した経験はないが、散歩の道すがら、虫の姿に引き寄せられ、ケータイのカメラで写すことがある。他に話し相手がいないので、シャッターチャンスを狙いながら、虫たちに無言で話しかけ、通じるわけはなくて、たいてい逃げられてしまう。動きの早い蝶はいまだに撮れたためしがない。意図不明な空振りの画像が残って、後で始末に困る。蜘蛛は静止しているようでも風に揺れ、背景にピントが合ってしまって、本体はボケボケにボケる。光る網目の美しさと一体の緊張した構図を何度狙っても、蜘蛛を写したかったのだろうという意図はかろうじて留めた一枚が残っているに過ぎない。
腕の幼稚拙劣は棚に上げて、いいカメラがほしいなあ、と広告を眺めては、先立つもののなさにため息を吐く。せいぜい練習して腕を磨こう。