不随詩片

内耳の迷路の奥へおくへどこまでもはいこみ 精神に接するつきあたりでふいに もだえなが … 続き…

病垂と肉月

病気は 癒やさねばならぬ しかし 生きることがじかに遺伝病である ならば 病熱の火照 … 続き…

磔刑

石垣に 鮮やかな私の影 のくびれた頸へひかる蜥蜴が しなやかな短剣のようにもぐりこん … 続き…

気息

呼気を吸気につなぐ 吸気を呼気につなぐ 呼気を吸気につなぐ 息ぐるしい常同症 瑕のあ … 続き…

閾値

刺戟があり 反応がある それによって限られる界域が肉体である とせよ 打ちすえられる … 続き…

導火線と爆弾

煙草を吸っている ことに気づく 火を 点けた覚えがないあわてて はげしく擦りなおすマ … 続き…

聖餐

頑迷な日のめぐりめ がらんがらんと清い音をたてて糸車を廻し ほつれる神経を紡ぐ 繊い … 続き…

龜と歩行

  1   きょうの長さだけ伸びた爪をきちんと 沈黙の中へ剪りおとし それでできる夜 … 続き…

鬼怒川/一九七九

熱を奪う 腰までの水 風の包囲 雲の地平 重い網を投つ さっと 空いちめんに拡がる … 続き…

鎮魂

するどく糾問され 夢から逃亡した 此岸でこころは ほっと息を吐いて救済を 求めるよう … 続き…

朝の歌

今朝の広すぎる食卓 の上の皿の上の さんま の尾鰭がどうしても皿 からはみでてしまう … 続き…

就眠儀式

一枚のパンの発端 からていねいに食べる 口から肛門までながい革ひもを垂らす 苦役の晩 … 続き…