昏き水に赤腹浮沈反復す
春の空溶けつつ渡る昼の月
草勁しアスファルト割り茂りをり
冬の垢雪がむとす鴉水温し
梨花一房グラスに浮かべ宴なし
雉叫び羽搏たき翔ばず畦を行き
四方より鶯鳴けど姿見えず
(注) 散歩で通う公園の池で、ある日、カワセミが小型の猛禽に追われるのを見た。全速で水面ぎりぎりを疾駆するカワセミのすぐ上を、鷹が覆いかぶさるように追う。カワセミが追跡を振り切ろうと反転する。重い鷹は惰性で追随できずにカワセミを飛び越し、一瞬的を見失うが、すぐ態勢を立て直して、また追いかけ始める。何度かそういう追いつ追われつを池の上で繰り返し、カワセミは木立の中へ逃げ込み、鷹も突っ込んでいって、視界から消えた。カワセミの安否はわからない。
その日以降、カワセミは姿を消し、その池にも、近くの小川にも出現しなくなった。今日こそは帰ってきてくれと念じつつ何日も通ったが、叶わない。
その日以降、カワセミは姿を消し、その池にも、近くの小川にも出現しなくなった。今日こそは帰ってきてくれと念じつつ何日も通ったが、叶わない。