街路樹を光の鎖捕縛せり
樹の睡り苛む電飾明滅す
水底に携帯電話鳴り続き
レンズ越し翡翠と視線を交わしけり
振りほどき振りほどき醒む蛸の夢
前生は蛸なるべしや幻肢痛
山路往く足裏に団栗の砕けつつ
網繕う力は尽きて蜘蛛凍え
寂しくば鴉など招せ木守柿
半ば散り銀杏華やぎいや増せり
朝曇りなれど翡翠の背の光
夢に得し佳句百吟や跡もなし