鉄塔は茜に溶けて闇滲む
緑黒に銀漲ぎり鵜羽広ぐ
鵜ら並び暗黒の深さ競いをり
段ボール被り道端に寝て乞食す
鴨羽根を搏ちて真白き腋見せつ
鴨群れてさざ波に揺れ浮き寝かな
口惜しかり他人の夢に出て蕩尽す
鴨の背に淡雪融けず積もりをり
金箔の剥れ薄衣の少年出づ
蛸に魂あり幽霊にも化けるべし
フィボナッチ数に呪われ蛸茹だる
耳澄まし幽かなる樹の脈を聴く
羽ばたきの極まりて宙に静止せり
餌乏しき凍てたる水面狙いをり
嘴尖り夢の羊膜に突き入れり
餌嚥む鳥の喉にミラーニューロン感応す
挽き伐られし剪定の痕樹液凍む
寒風や鳥のうなじを吹き乱し
鴨素足氷を踏みて朱かりき
寒の雨堅き芽育み滴れり