周囲の木立を小鳥たちが声から声へと渡っていった。なにがあの小鳥たちを呼んだのか、青空に凝らした銃口の無聊の輝きであったか。口ぐちに自分たちの悦楽を囀りながら羽撃いてまわったあの小鳥たちは、ほんとうは、心象の枯れ藪の蔭からとびたち枝えだの発語の芽をついばんだ。繊い爪で死語のかさなりをかき散らした。肩までおりてきてそれでも、虚ろな義眼をつつきあぐねていたのだとおもう。
いきなり銃口は発射した。一羽も墜ちはしなかったろう。何羽かはまだ、強いられたようにそれとも生理のようにふるえる梢から梢へとびかわした。ふたたび銃口は発射した……。撃たれた重い屍体のように、静寂が墜ちた。
なぜあの小鳥たちを逐ったのか、小鳥たちが空へ散らばっていくのがただここちよかったのか、感傷の水溜りにむやみにつぶてを投げ込む稚拙な対症療法であったか、孤独な<時>と対峙しはじめていたのか、蹲んだまま年老いる生涯の理由にはげしく目を瞑りたかったのか、いやさいごに、わたしが、ほかの<時>ちがう<邦>へ逐われるひときれの弁証を欲していたのか。