
目を瞠る雉耳羽をも欹てて [2]
畦道や刈られたる草香ばしき
刈り伏せる青草の血の匂い満つ
真夜中の静寂離人症めけり
ねぎ畠畝の揺らぎや気の迷い
じゃがいもの花淡紫に風を染む
茅花熟れ綿毛光を放しをり
鵯の墜ちつつ溪を渡りけり
空を駆る燕二羽交差せり
柿若葉ひかり柔らかく雨後の如
祝福の光満ちたり柿若葉
しばし待たれよ桑の実黒く熟るゝまで
段々に歩幅狭まりて古希を越ゆ
命数の尽きたるか薮筍生えず
内臓の輪切り見せつつ医者諭す
注
[1] 母が桑の葉を摘んでいるときに畑の中で雉の母仔を見つけ、逃げ遅れた雛を四羽捕まえてきた。雛を入れた鳥籠を、桑畑の脇の柿の木の枝に低く吊るした。母鳥は鳥籠の雛を見つけ、警戒しながらも雛に餌を運んできた。虫や葉っぱを銜えて走ってくる。雛に口移しで餌を与えると、急いで走り去り、また餌を銜えてはすぐに戻ってる。四羽もいるから大忙しである。半日、様子を見ていたろうか。母鳥の健気さに打たれ、不憫になって、雛を放した。仔たちはすぐ藪の中へ走り去った。
その前年か前々年かに、やはり雲雀の雛を攫って鳥かごに入れて、庭の柿の木の枝に吊るし、半月ほど、親鳥が律儀に餌をはこんできて雛を育てたが、籠の中の雛を蛇に呑まれてしまったことがあって(注)、あれを繰り返すのは勘弁だと思ったことも大きい。
もう六十余年も前のことだ。
[2] よく見ると雉の頭には耳が付いている。いや耳のように見える飾り羽で、冠羽とも耳羽ともいうらしい。
[1] 母が桑の葉を摘んでいるときに畑の中で雉の母仔を見つけ、逃げ遅れた雛を四羽捕まえてきた。雛を入れた鳥籠を、桑畑の脇の柿の木の枝に低く吊るした。母鳥は鳥籠の雛を見つけ、警戒しながらも雛に餌を運んできた。虫や葉っぱを銜えて走ってくる。雛に口移しで餌を与えると、急いで走り去り、また餌を銜えてはすぐに戻ってる。四羽もいるから大忙しである。半日、様子を見ていたろうか。母鳥の健気さに打たれ、不憫になって、雛を放した。仔たちはすぐ藪の中へ走り去った。
その前年か前々年かに、やはり雲雀の雛を攫って鳥かごに入れて、庭の柿の木の枝に吊るし、半月ほど、親鳥が律儀に餌をはこんできて雛を育てたが、籠の中の雛を蛇に呑まれてしまったことがあって(注)、あれを繰り返すのは勘弁だと思ったことも大きい。
もう六十余年も前のことだ。
[2] よく見ると雉の頭には耳が付いている。いや耳のように見える飾り羽で、冠羽とも耳羽ともいうらしい。
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