AI の効能(2)

 このところ、ビデオ編集ソフトを使うことが多い。マニュアル本を通読する根気すら続かない怠惰な素人には、やりたいことははっきりしているのに、どういう手順を踏めばそれができるかわからず、四苦八苦の試行錯誤で時間ばかり経つ。急がば回れで、基礎からちゃんと習うのが王道なのだとわかっていても、AIに手順を尋ねると、編集ソフトメーカーのQA集などよりずっと的確な指示をくれる。作業が進み、やりたいことが形になって見えてきて、精神衛生的にはよろしい。難点は、その場限りの解決で、経験がちっとも蓄積されていかないことだろうか。賢くなるのはAIばかりで、それに比例して人間が横着になっていく。昔は人夫がツルハシで削っていた地面を、今はショベルカーがあっというまに均してくれる。人夫の筋肉は鈍っていくようなものか。
 しかし、これはまだAIの初期段階なのだろう。操作手順は教えてくれても、実際の操作をするのはまだ人間で、しかも結構煩雑だったり、間違えやすかったりする(なんだかカンニングしたのに写し間違えてしまう受験生みたいなことがよく生じる)。だから、次の段階では、その手順自体をAIが実行してくれるようになるはずだ。いや、もうその段階に近づいているソフトがあるかもしれない。プログラミングに関しては、すでに生成したコードをIDE(プログラム開発ソフト)に渡すところまで来ているようだし。そしてその先は、「こうしたい」と意図を伝えればAIが自動的に編集してくれるようになるはずだ。その先は、意図を伝えるまでもなくAIが察して編集するところまで行くだろう。楽しみにして待とう(と言って、怠慢を糊塗するが、一体いつまで生きる気なのか)。