それを、今朝、生ゴミとして処分した。何がきっかけだかわからない。ものの弾みで、とか、出来心で、とか云う他に説明の付けようがない。しかつめらしく云えば、何十年ものあいだ知らぬ間に蓄積されてきた促しが、今になって閾値を超えた。表面張力で盛り上がっているコップの水に最後の一滴が垂れて水がこぼれ出た、というようなことかもしれない。
半透明のゴミ袋にそのまま押し込めば、ゴミ回収業者が幼児遺棄と見間違えたりして厄介が生じそうで、腕と脚がバラけないようにガムテープで胴体に縛りつけ、俵のような形にまとめてから、さらに紙袋に入れて中身が見えないようにした。ガムテープを巻きつけるときも紙袋に詰め込むときも、なんだか屍体を処分しているような手触りが残って、目をそらせながら作業したのが我ながら可笑しかったが、想像がゴミ焼却場で他のゴミとともに燃やされる場面まで引っぱられたりもせず、粘りもしなかった。
こうやって俺も始末してくれればいいのだが。いずれ葬儀屋が感傷抜きで事務的に処置するのだから、まあ大差はない。