徘徊雑句31(花鳥19)

ほふり動悸執念くくねりをり 
  

蜘蛛空にほそき糸吐き風を耐ふ 天空の蜘蛛
  

蝉はいつ鳴き止んだか知る人ぞなし 
  

たわわなる南天の実に冬ぬくし 西日を浴びる南天の実  
  

蟻避けて象らわずかに列を乱す  
  

合衆むらがり糞全林を白く染む 密集して営巣する鵜 
  

裸木に実一つ寒さぶしプラタナス  
  

鳥一羽支えて枯葉しなりをり 枯葉に止まる翡翠 
  

はや花を孕みて堅き辛夷こぶし蕾めり 辛夷の花芽  
  

銀杏いてふ散る首伸べ羽ひろげたる鶴の姿で 銀杏の落葉 

 
枯野原煩悩つき/rt>るときやあらむ 
  

水鏡りつつ鷺の歩みけり 水鏡に映るシラサギ  
    
春まだき花粉そら涕泗ていし涸る(注1) 
  

常緑樹なるに裸木冬寒し  強剪定された楠の並木  
むごく切払われ樹々冬を越す 
  

しげしげと翡翠カワセミ川面凝視みつめをり 水面を見下ろすカワセミ
 
  

(注1) ここの「涕泗」はもちろん杜甫「登岳陽楼」の結句「憑軒涕泗流」からもらったものだ。なみだはたまに見る字で常用漢字に採用されているが、はなみずはここでしか見たことがない。身体的な生々しさを具えていて、杜甫が袖口で拭うさままで想起させる。