検査室

                                 右耳は失聴し、聞こ … 続き…

地下道

  ふたりで爆弾を仕掛けた。 彼が爆薬を調合しているあいだ 時計を分解して時限装置を … 続き…

触手

   蔓つる植物はどうやって巻き付く対象を見つけるのだろうか、と目にするたびに不思議 … 続き…

戯歌

  言葉にはね、表面張力があるんだ、 だから笹舟を浮かべることができるし、 だからア … 続き…

三つの寓話

     湯殿でシャワーを浴びながら足元を見下ろすと、一匹の蟻が床を流されている。浅 … 続き…

幽体離脱

なぎ倒される草の痛み 踏みにじられる芝の疼き 仰臥する躰から 上半身の幻が何度も何度 … 続き…

不随詩片

内耳の迷路の奥へおくへどこまでもはいこみ 精神に接するつきあたりでふいに もだえなが … 続き…

病垂と肉月

病気は 癒やさねばならぬ しかし 生きることがじかに遺伝病である ならば 病熱の火照 … 続き…

磔刑

石垣に 鮮やかな私の影 のくびれた頸へひかる蜥蜴が しなやかな短剣のようにもぐりこん … 続き…

気息

呼気を吸気につなぐ 吸気を呼気につなぐ 呼気を吸気につなぐ 息ぐるしい常同症 瑕のあ … 続き…

閾値

刺戟があり 反応がある それによって限られる界域が肉体である とせよ 打ちすえられる … 続き…

導火線と爆弾

煙草を吸っている ことに気づく 火を 点けた覚えがないあわてて はげしく擦りなおすマ … 続き…

聖餐

頑迷な日のめぐりめ がらんがらんと清い音をたてて糸車を廻し ほつれる神経を紡ぐ 繊い … 続き…

龜と歩行

  1   きょうの長さだけ伸びた爪をきちんと 沈黙の中へ剪りおとし それでできる夜 … 続き…

鬼怒川/一九七九

熱を奪う 腰までの水 風の包囲 雲の地平 重い網を投つ さっと 空いちめんに拡がる … 続き…

鎮魂

するどく糾問され 夢から逃亡した 此岸でこころは ほっと息を吐いて救済を 求めるよう … 続き…

朝の歌

今朝の広すぎる食卓 の上の皿の上の さんま の尾鰭がどうしても皿 からはみでてしまう … 続き…

就眠儀式

一枚のパンの発端 からていねいに食べる 口から肛門までながい革ひもを垂らす 苦役の晩 … 続き…

日溜まりにて

 雑木の疎林の日溜まりでひとり枯野を眺おろしていた。感傷であったかもしれない。膝を抱 … 続き…

色盲論

−−昔教えたことのある生徒は、緑の山を赤のクレヨンで描いた。その生徒は色盲だった。 … 続き…