徘徊雑句19(花鳥7)

春の雪重し枯れ葦耐へず折れ 雪に埋もれた葦の岸辺

鷹に狩られ翡翠カワセミもはや夢にでず(注)   翔ぶカワセミ1 翔ぶカワセミ2 電線に止まるチョウゲンボウ

雄雌は従いたるや追いたるや マガモの行列

くらき水に赤腹浮沈反復す
  

春の空溶けつつ渡る昼の月 昼の月
    
草勁しアスファルト割り茂りをり アスファルトを割る草
    
冬の垢そそがむとすぬるし 水浴びしようとする鴉
    
梨花一房グラスに浮かべ宴なし グラスに活けた梨の花油彩風
    
雉叫び羽搏たき翔ばずあぜを行き 雉のほろろ
    
四方より鶯鳴けど姿見えず 芽吹く谷津
   

(注) 散歩で通う公園の池で、ある日、カワセミが小型の猛禽に追われるのを見た。全速で水面ぎりぎりを疾駆するカワセミのすぐ上を、鷹が覆いかぶさるように追う。カワセミが追跡を振り切ろうと反転する。重い鷹は惰性で追随できずにカワセミを飛び越し、一瞬的を見失うが、すぐ態勢を立て直して、また追いかけ始める。何度かそういう追いつ追われつを池の上で繰り返し、カワセミは木立の中へ逃げ込み、鷹も突っ込んでいって、視界から消えた。カワセミの安否はわからない。
 その日以降、カワセミは姿を消し、その池にも、近くの小川にも出現しなくなった。今日こそは帰ってきてくれと念じつつ何日も通ったが、叶わない。