祈りと呪い

ネットで呪具の通販を始めた。
藁人形と五寸釘のセット、石ころ、動物の骨や歯、鳥の落ち羽根、流木の端切れ、その他、もろもろのガラクタ。
効能書きと写真を組み合わせてネットに出品するとそのうち誰かが見つける。
効能書きはたしかに読まれている。写真も見られている。どちらもおろそかにはできない。中でも価格の設定が重要だ。営業機密だからその秘訣は明かせないが、もちろん原価とは全く関係がない。薬九層倍どころではない。
売れるものは高くてもすぐに売れてしまい、値段が安くても売れ残るものはあるが、値下げは禁物である。むしろ徐々に値上げするか、それでも売れ残れば効能を書き直して別物に仕立て直さなければならない。価値とはなにか。誰も知らない。ただ、誰かや何かを呪いたい人は大勢いる、ということはわかる。しかも呪いは呪具を通して強化増幅でき、市場で買えると考えている。まれに礼状すら貰うことがある。でも、くすっとも笑ってはならない。きっと、買った人に察知される。
そんなの詐欺ではないか。確かに。麻薬の売人よりましか、殺人請負より悪質か。身過ぎ世過ぎ。職業に貴賎なし、だろう。儲けるが勝ち。実はそんなに売れている訳でもないが、三日やったらもう止められない。
本当に効くんだ。商品にはたっぷりと祈りを憑けてある。効くといったら、効くんだから。効かないわけがないんだから。