徘徊雑句21(花鳥9)

下闇に蝉穴あまた冥き口 底しれぬ蝉穴 
  

しかめたる瞼こじ入る陽の眩し 

  
微風立ちさざ波水面みなも疾りけり さざ波 
 
白雨きて樹々明るきまま掠れ 
   
蟷螂カマキリや老いたるになお鎌構え 鎌をもたげるカマキリ 
  

先触れの一輪風に吹かれをり 早咲きのコスモス 
 

花尽きて葉のみ茂れり悲願花 冬至の彼岸花 
  
天空に色なき孔雀羽根広ぐ
 
首なしのマネキン羽衣纏い立つ
 
鳥の影見えねど岩にしるき跡 カワセミの糞の跡 獲物をくわえたカワセミ (
 
椋鳥ら全身に電波浴び憩いをり 電波塔に止まる椋鳥の群れ 
  

名残惜しむ人なく萩のしおれあり 萎れかけた萩 
  
諍いの種ありや蜻蛉とんぼ空中戦 
 
溺れむとしつつ海峡を蝶渡る 
 
諍いか睦みあいか鳥空にもつれ 
 
吊るしたる玉葱のごと石榴ザクロ熟る 熟れた柘榴  
 
蜘蛛の巣に掛るは枯葉ばかりなり 枯葉のかかる蜘蛛の巣
  


) カワセミが岩や枝の上で糞をするのを目撃することがある。白の水彩絵具のような軟便だ。鳥の姿が見えない日が続いても、この糞の跡を見かければ出没しているのだとわかり、あきらめずに通わせる力がある。