AI絵師

 AIの進化が著しく、パソコンやスマホでもその成果を享受できるようになってきた。身近な例でいえば、スマホの音声認識(ex. Siri)や顔認証(ex. FaceID)があり、パソコンでは自動翻訳(ex. DeepL)が欠かせない道具になってきた。チェス(ex. DeepBlue)や将棋(ex. Ponanza)や囲碁(ex. AlphaGo)などの一芸AIはいうにおよばず、最近ではもうすこし汎用的に、言葉で絵の内容を指示すると何やらそれらしい画像を生成するフリーのお絵かきAIが出現し、そのうちのひとつ、StableDiffusionには驚かされた。机上のパソコンでさくさく稼働するから、万人がお抱えの絵師を雇ったようなもので、これで生成した画像がいま凄まじい勢いでネットに氾濫しはじめている。小学生の夏休みの宿題どころか、絵のコンテストに出品して入選したつわ者まで現れたらしい。

 試しに吉岡実の「タコ」(『サフラン摘み』所収)の一節を与えて描かせてみた作品(?)をいくつか添付しておこう[注]。

 十年前には予想もできなかったAI技術の奔流が起きている。ただ、どこへ行くのか(連れて行かれるのか)わからないという意味での不気味も含めて、不気味の谷を越えるのは難しいかもしれない。

AIが描いたタコ1 AIが描いたタコ2 AIが描いたタコ3 AIが描いたタコ4

[注]
吉岡実『サフラン摘み』(思潮社 1976年刊)の「タコ」の下記の部分をDeepLが訳した英文でStableDiffusionに生成させた画像。

(DeepLに与えた日本語)
タコの母親はとりみだした恋人のように動く岩を抱く。
タコの生殖はとても呪われたフォームを見せる。それは濡れて裂かれた傘のような肉の散乱にちかい。タコのオスの七つの足は水を抱き込む。そして残されたごく先細りの一つの足がくだの器官の役目をする。ちょっと見ると靴の紐のようにみすぼらしく、タコのメスの小さな孔を求めて入り込む。これが交接といえるだろうか。水は起伏してながれる。
[原文には句読点はなく、一文字空白が置かれている。上記は引用者がDeepLに与える際に句読点を補ったもの]

(StableDiffusionに与えたDeepLの英文訳)
The octopus mother embraces the rock that moves like a distraught lover.
The intercourse of the octopus shows a very cursed form. It resembles a scattering of flesh like a wet, torn umbrella. The octopus male’s seven legs embrace the water. And one of the remaining very tapered legs acts as a cradle. It looks a bit like a shoelace, and it seeks the small hole of the female octopus to enter. Can this be called a copulation? Water waves and flows.