ニーバーの祈り

 宇多田ヒカルのアルバムを聞いていて、Wait&Seeに、「変えられないものを受け入れ、受け入れられないもの…」という歌詞が出てくる。その原典がニーバーという牧師の説教であると知った。というより、もう10年ほども前になろうか、渡辺和子の新聞コラムで、その句が引用されていて、あっ、宇多田の歌詞もそれを引用しているのだと気付いたものの、原著者の名前は覚えられずにいて、今あらためて調べたのだった。

 iTunesで演奏中の楽曲の歌詞を、Lyric Masterというソフトが表示してくれる。そこから歌詞をコピーしてGoogle検索するとすぐにWikiの記事が出てきた。渡辺和子と合わせて検索すると、何冊もの本がヒットし、彼女も繰り返し引用していることが知れた。これを個人の記憶と紙の文献だけでやろうとすればどのくらいの時間と手間がかかるだろうか、ちょっと茫然としてしまう。それだけ記憶力をネットに(あるいはもっと端的にGoogleに)依存してしまった、という情けない話の一例にすぎないのではあるが。