木の拷問

 葉が散って裸木が寂しいのを賑やかすにしてはまだ早いだろうに、もうクリスマス気分を煽ろうというのか、この時期に、駅前のけやきの並木に、電飾の豆球を数珠つなぎにしたコードが巻き付けられている。夜になると、この無数の豆球が発光し、瞬きさえする。落葉樹は、黄葉したころから、枝にはもう次の春の芽吹きが準備されつつあり、短かくなる日照を惜しみながらひと冬かけてゆっくりと育っているのだ。これでは樹は眠れやしない。樹に不眠の拷問を科す刑罰のようで、白昼、むきだしになっている縛り紐は尖った豆球が鉄条網の棘に似て、いっそう酷たらしく醜い。
 この悪習はいつ頃から始まったのか。LEDの普及で省電力という言い訳ができたことが、この流行を後押ししただろう。