徘徊雑句14(花鳥2)

捨てられしコンテナ深き錆に耐ふ  野ざらしのコンテナ

星座なる妄想の図天覆う

星座から這い出してくる半獣神
  

少年のあばら浮きけり栃若葉   栃の若葉
  
約したる妻まだ来ぬに思案顔  パイプに乗るカワセミ(雄) 
  

カワセミの光包みて若葉萌ゆ  若葉の中のカワセミ
  
刈草の青き血の乾く匂い満つ

ゴム堰を丸く越ゆるや小瀑布  ゴム堰

  
空に病んで墜ちて悶えて死して腐す  鳥の死骸   
  
行々子前世の因縁宣べ募る  葭原のヨシキリ
葭切ヨシキリやひたすら虚空へおらびをり
葭切ヨシキリの囀り止みて耳鳴りす
葭切ヨシキリ濁声だみごえ止みて無音澄む

酷きまで刈られし幹に新芽吹く  幹から芽吹くケヤキ 幹から芽吹くイチョウ
  
刈らるれどなお芽吹く力我にあれ ようやく芽吹いた街路樹

一声ではたと止みたりホトトギス

 

五線譜をこぼれる音符若燕  電線に憩う燕
 

泰山木の巨花芳香を天に放つ  開きかけた泰山木の花 開ききった泰山木の花
馥郁か酸鼻か白き花腐たし

 
臨月の腹重たげに猫走る  立ち止まる猫

 
麦怒髪伐折羅大将ばさらたいしょう三千騎  熟れた麦の穂  

 
無花果いちじくの実堅く少年の睾丸のごと  若い無花果の実   

 
白鳥の歌歌わずに仔を育つ  白鳥の親子

 
天空によじ登らむと虚空這う   天に伸びる葛の芽 
    
採る人のなく道端の実の夥し  桑の実 熟れた野苺 鈴生りのヤマモモ