徘徊雑句13(花鳥)

翡翠カワセミの背の光水面みなも突く  カワセミの背に差す陽 水面に餌を狙うカワセミ
   
辛夷コブシなる柔毛にこげの蕾花包み  柔毛に覆われた蕾でまどろむ辛夷の花 コブシを開けば白き花
  
痴呆ぼけるなと励ますがごと木瓜ボケ紅し  野に咲く木瓜
  
雛の餌を川蝉カワセミの眼の険し  水面を窺うカワセミ 横を睨むカワセミ
  
競り咲きて競り散る花や悔い深し  咲き急ぐ花 散り急く花  
  

散る花を抱きとめ蜘蛛の糸揺るる  蜘蛛の巣に掛かって揺れるサクラの花びら
    
きょう習うとり吃りつつ飽きもせず  メジロは経は唱えない
  

雲雀ひばり空に借銭の苦を嘆きをり(注)  ホバリングしながら囀る雲雀
  

初めての恋かおづおづ添いかねて  なかなか近づかないカワセミの雄(下)と雌(上)
  
帰雁らの粛々渡る天の河  鴨離陸 鴨の渡り
  

帰る地を忘れたる白鳥とり春の水  留鳥となった白鳥
  
キジの赤椿の闇に紛れけり  野に出たキジ 藪に逃げ込んだキジ
  

少年のろく透く翅脈栃若葉  葉脈が浮き立つ栃の若葉
 

(注)雲雀の囀りの聞きなしに、「利がつく、利がつく、利に利がつく」というのがある、と子供の頃に聞いた。
   借金に苦しむ百姓の嘆きか、濡れ手で粟の高利貸の高笑いか、複利の恐ろしさ(例、コロナ禍の感染者の増加)
   への警告か。