輪廻転生

聳え立つ柱の途中にしがみついて慄えていた
登る先には空があるだけ
見下ろせば地面ははるか下方にかすみ
腕の力と腿の力だけで柱に抱きつき
昇ることも降りることもできない

見上げれば目眩が、見下ろせばもっと激しい目眩が
柱に絡める腕と脚をこわばらせる
全身が怯えでかじかんでいる
かじかみの萎縮の力でかろうじて柱に抱きついている

登ってきたのか降りてきたのか
覚めたらいきなり柱にしがみついていた
身動きならずただしがみついていた
柱の途中にしがみついたまま干からび
風に吹かれて萎びてミイラになる
やがて柱も朽ちて吹き倒される

それともついに
背中が割け、翅が生えて転生する
おうよ
ミイラの蛹から脱皮して
蝶のようにふらふらと中空にあくがれ出て
ふわふわと柱を廻って脱け殻を見る
見知らぬ怪訝なもののようにしげしげと抜け殻を見る
ほころんだ玉の緒が細くなびくのを不思議なもののように見て
ひらひらどこかへ飛び去る

羽ばたいて誰かの妄想の中へまぎれこむ
高い柱の途中にしがみついて慄えている男の夢へ
殺生の後味に慄いている男の懺悔へ
厄災に打ちのめされた無神論者の祈りへ