くず

 路上に散り敷く花に気づき、見上げれば、くずの花盛りであった。密生した篠竹の藪が道の上までのしかかるように茂り、その上にさらに覆いかぶさるように葛が巻き付いて、大きな葉で藪を覆いつくしている。典型的な耕作放棄地の植相だ。その葛のあちこちに花房が見える。
 藤の垂れ下がる花房を短くつづめて上向きに立てると、葛の花房になろうか。円錐形の底辺から螺旋を描くように小さな花がつぎつぎに開く。同じマメ科なので、春秋の別はあれ、花の形も開花の順も似ている。花柄が脆いのか、前夜の大風に藪ごと揺さぶられて落ちた花が、道を埋めるほどではないにしろ(注)、踏み渡るのはためらわれた。
 


畏友、大谷雅夫に「道をうづむ花」という論考があるのを思い出した。