風害

 今年の秋は、樹の葉の枯れ方が異常だ。台風24号は強風を伴ってこの地を縦断した。台風通過後の街路樹の葉がみすぼらしく萎れはじめた異変を感じたのは翌日だったか翌々日だったか。しばらく前の剪定で枝葉が梳かれていた街路樹に、はやモミジかと思わせる黄ばみがはじまり、日をおかずに黄を通り越して褐色に枯れだした。落葉樹も常緑樹もともに被害を受け、どの樹も南西に面した枝の葉の痛みが激しいように見える。ここは内陸で海からは遠く、潮風が吹くことはない土地柄だが、海の潮気をたっぷりと含んだ台風があまりに強力迅速で、塩がここまで運ばれ、南西から吹きつけたのだろう。欅などは本来の黄葉を経ないまま散って、裸木になっていき、同じ木の逆側の北東の枝の葉がかろうじてまだうっすら緑をたもっている。クヌギは葉が茶色く枯れたまま枝にしがみついているから、立ち枯れてしまったようにさえ見える。台風の前にはもう徐々にもみじが進み始めていたサクラは、一気に葉を吹き散らされてしまった。クスノキやスダジイなど常緑樹でも、日を追うにつれ被害があからさまになってきた。もろに風を浴びた西南側で、枝に残ったままふちから枯れかけている葉が多く、あるいはすでに散ってしまい、葉の密度が薄くなって、枝が目立つ。潮風に揉みくちゃにされて受けた傷が癒えぬまま枯れていく葉が多いのであろう。
 原発事故の後の雨で、当地も放射能汚染に曝された。近隣の線量を測って歩いたのはその二年も後のことで、サンプル数も大した数ではないけれど、風雨を直に受けた大きい建物の東側で線量が高かったことを思い出した。