蛍の光

 薄いみどりを掃いたような黄色い光の粒。ゆらりと揺れながら私の方に飛んできて、ゆっくり減衰して消え、またその先でほのかに光りはじめるゆるやかな光の軌跡に手を伸ばし、両掌で包むようにそっと捕まえる。避けるふうもなく、あっさりと囚えられ、掌を開けば、掌を照らしながらゆるゆる指を登り、指先でふっと浮遊する。照らされた掌の皺の陰影が目に残る。蛍の呼吸に合わせてか、明るさが命の灯そのままに増減し、ゆるやかな曳光する弧を描く。羽ばたきは闇に溶けて見えないので、テントウムシやコガネムシやの他の甲虫類の昼間の飛翔が与える一種の暑苦しさ、重力から逃れようとあがく懸命さが消え、浮遊感が際立つのだろう。