昼寝

 保育園では夏の午後、昼寝の時間があった。各自が小さな敷布団をもち、広い遊戯室にそれを敷いて雑魚寝するスタイルだった。その布団の緑と青の太い格子模様を覚えている。乾いたオネショの匂いが残る布団。それを思い出したのは、ラジオからサンサーンスの白鳥が流れてきたからだ。昼寝の時間にいつもかかっていた曲だ。先生が、昼寝の時間ですよ、と号令して、お休みの曲を蓄音機でかける。レコード盤の上に針が落とされ、しばらくジリジリという雑音が鳴ってから、白鳥が流れ始める。冒頭の細く震えながら上昇するバイオリンの音に陶然となり、そのままあっけなく眠りに落ちたと思う。