野の果実(春から夏へ)

 野道を徘徊していると、野生の果実におりおり出会う。今の子供らは見向きもしないし、教えても興味は示さない。野原を駆け回っていた幼い頃は、この実は食えるか食えないか、どこに生え、熟す時はいつか、などが重大な関心事であったが。果実に限らず、茅花つばな虎杖いたどりや、椿やツツジの蜜もあった。きれいだが食えない蛇苺や、齧ると口が半日痺れる山椒の実なども。コロナ禍の年の春から初夏にかけて見かけた季節の賜物たち。

蛇苺
食べられない。食べても毒はないようだが、不味くて、おすすめはしない。蛇にでも食わしておけ、という意だろうか。

完熟の茱萸
青から黄色に、さらに熟すと鮮やかな赤へ色づき、やや透きとおって周囲が映るほどに張り詰めて照る。病熱の臓器のような不気味さがある。

黒く熟れる桑の実
左の黒い実が熟したもの。右の実はようやく色づき始めたばかりで食べても苦酸っぱいばかり。黒く熟した実の果汁は濃い紫で、頬張ると口の中が紫に染まった。

野苺
梅雨の頃に道端で熟れている。酸味があって美味しい。今の子供達は見向きもしないのだろう。小学校の校庭の脇に鈴なりに生っていた。