揚羽の幼虫

 狭いベランダながら、いくつか鉢植えがある。青紫蘇は夏の間の麺の薬味に欠かせず、極小の菜園プランターで育てている。旅行土産の水栽培のガジュマルを土の鉢に植え直したら、すくすく伸びて、成長を続けている。誰かからもらったサボテンやら折鶴蘭もいつの間にか株を増やしている。そんななかに柑橘系の植物が2種類。ひとつは文旦で、実を食べた後に残った種を蒔いたら、たくさん発芽し、そのままでは密植過ぎるので、数本に間引いたらこれも二尺を超えるまでに育って茂っている。
 もうひとつは近所の雑木林から採取してきた山椒の小木である。山椒は柑橘系には珍しい落葉樹で、ちょうどたけのこの季節に若葉が萌えるが、ベランダの鉢植えでは越冬できないのか、これまで若芽が出ない年が続き、枯らしてしまったか、と引き抜いてはまた野原から採ってきて植え替えるということを繰り返してきた。それが、去年植えた苗はこの春にちゃんと芽吹いて、葉が茂ったものだから愛着が強い。まだ一尺余り、か細い幹だけのほんの幼木である。それが揚羽の幼虫にやられてしまった。葉は容赦なく食い尽くされ丸裸である。犯人の揚羽の幼虫は隣の文旦の枝にいた。よりによって、こんないたいけない山椒の木にたかって、まだ足らずに文旦の葉に取り付いている。柑橘系の木は枝に鋭い棘を持つが、揚羽の幼虫はものともせず、葉から葉へ枝を渡る。蚕ならためらわずに素手でつまめるのに、青虫となると、刺す針などないのに尻込みして素手では摘めない。割り箸で捕獲し、ビニール袋に封じてゴミ箱に捨てた。成虫の飛ぶ姿は優美だし、幼虫の模様を愛でる人もあるようだが、山椒の葉を全滅させ、文旦にまでたかられては許しておけない。

丸裸の山椒の木
丸裸にされた山椒
来年、芽吹くか
文旦にたかる幼虫
山椒を食い尽くして、
文旦に移ってきた
  
捕獲された犯人
犯人捕獲。
成虫とは似ても似つかない